育休のお金の制度は、病気の休職に比べるとずっと手厚くできています。

ただし、全部が止まるわけではない。ここを取り違えると、休んでいる最中に届く納付書に驚くことになります。体験談では、育休のさなかに住民税10数万円の請求が届きました。

社会保険料は、労使とも免除される

日本年金機構の案内によれば、育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等の期間、健康保険と厚生年金の保険料は本人も会社も、両方とも免除されます。産休(産前産後休業)にも別の条文で同じ免除があり、そちらは産休と育休は、お金の出どころが違うで扱っています。

しかも、ただ止まるだけではありません。

この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われます。

— 日本年金機構「厚生年金保険料等の免除」

払っていないのに、納めたことになる。病気の休職には免除そのものが無い(第1クラスタで整理)ことを思うと、ここが両者のいちばん大きな分かれ目です。休職と育休の違いを土台から並べた横断ガイドもあります。

手続きは、事業主が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ出すことで動きます。自分で年金事務所へ行く必要はありません。ただ、裏を返せば、会社が出し忘れると免除は動かない。しかもこの申出には期限があり、日本年金機構は育児休業等の期間中、または終了日から起算して1か月以内に行わなければならないと案内しています。休みに入る前に「免除の届出、お願いできますか」とひとこと確かめておくのが確実です。

免除される「月」は、どう決まるか

免除は日割りではなく、月の単位で動きます。日本年金機構の案内によれば、毎月の保険料が免除されるのは、育児休業等の開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月まで。たとえば10月10日に休みに入り、翌年1月20日に終えたなら、免除は10月・11月・12月の3か月分です。終了日の翌日である1月21日が属する月の前月、つまり12月までで数えるので、1月分は入りません。

短い育休はどうか。同じ月のなかで始まって終わる場合、以前は終了日がその月の末日であるときしか免除になりませんでした。これが改正され、令和4年10月1日以降に開始した育休については、開始日を含む月に14日以上取得していれば、その月の保険料が免除されます。

賞与にかかる保険料は、別のものさしです。令和4年10月1日以降に開始した育休では、賞与月の末日を含んだ連続1か月を超える育休を取得した場合に限って免除されます。月末だけかすめる数日の育休では、賞与の保険料は免除されません。

免除の判定の骨組み(令和4年10月1日以降に開始した育休)
  • 毎月の保険料

    開始日の属する月から、終了日の翌日が属する月の前月まで免除

  • 同じ月に始まって終わる育休

    その月に14日以上取得していれば免除

    月末まで休んでいなくてもよい

  • 賞与の保険料

    賞与月の末日を含む連続1か月超の育休に限り免除

    月末をまたぐだけでは免除されない

判定するのは日本年金機構です。開始日・終了日・賞与の支給月を持って、勤務先か年金事務所で自分の日程を当てはめてください。令和4年9月30日以前に開始した育休は改正前の扱いになります。

ここまでが、日本年金機構の案内で確かめられた骨組みです。分割して取る場合や、産後パパ育休と組み合わせる場合の細かな当てはめは、自分の日程を持って勤務先か年金事務所へ。

住民税は、止まらない

いっぽうの住民税。これは育休の制度の外側にいます。

所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。

— 地方税法 第313条第1項

いま納める住民税は、去年働いていたぶんへの税金です。育休で収入が絶えても、去年の所得が消えるわけではない。だから請求は来ます。

ふだんは給与から天引きされていますが、給与が止まれば天引きの元も無くなります。地方税法321条の5第2項により、給与の支払を受けないこととなった場合、その翌月以降の月割額を会社が徴収して納める義務は無くなる。引かれなかったぶんは、消えずに残ります。残りをどう納めるか——納付書で自分で納めるのか、復職後にまとめてなのか——は、会社の運用と市区町村の取り扱いしだいです。

育休中のお金の支払い — 止まるものと止まらないもの
  • 健康保険料・厚生年金保険料

    免除される(労使とも)

    年金額の計算では納めた期間扱い。手続きは事業主経由

  • 住民税

    止まらない

    前年の所得に対する税額。天引きできない分は別途納める

  • 所得税

    給与が無ければ源泉徴収も無い

    給付金は非課税(雇用保険法12条の準用)

住民税の納め方は会社と市区町村で変わります。金額は6月ごろに届く住民税の決定通知書で確認できます。

休む前の、3つの確認

  1. 1

    免除の届出を会社に確認する

    「育児休業等取得者申出書は出してもらえますか」。事業主経由の手続きなので、頼んで、確かめる。それだけです。

  2. 2

    住民税の残額と納め方を確認する

    毎月の天引き額は給与明細に載っています。休業中の納め方(納付書か、復職後の精算か)を会社と市区町村に。

  3. 3

    住民税のぶんを、先に取り分けておく

    まとまった納付書が届いても慌てないように。天引き額×休業月数が目安になります。

支払いの全体像がつかめたら、次は入ってくるお金と出ていくお金を時系列に並べます。育休のお金でいちばん見落とされるのは、額ではなくタイミングです。