会社の休職期間には、終わりがあります。
そのとき手元に何が残っていて、何が変わるのか。それを知らないまま期限の日を迎えるのが、いちばん重い形です。だから、期限が見えてくる前に一度だけ読んでおいてください。
先に押さえたいのはひとつ。会社の休職期間と、健康保険の給付の期間は、別々に進んでいるということです。会社の期間が尽きても、健康保険の期間まで尽きるとは限りません。
辞めても、続くことがある
健康保険法104条に、継続給付という定めがあります。
被保険者の資格を喪失した日(中略)の前日まで引き続き一年以上被保険者(中略)であった者であって、その資格を喪失した際に傷病手当金(中略)の支給を受けているものは、被保険者として受けることができるはずであった期間、継続して同一の保険者からその給付を受けることができる。
— 健康保険法 第104条
協会けんぽの案内も同じことを言っています。退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること。資格喪失時に傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること。
退職日までに、引き続き1年以上の被保険者期間がある
条件の1つを満たす
資格を喪失した際に、傷病手当金を受けている(または受ける条件を満たしている)
条件の1つを満たす
両方を満たす
受けることができるはずであった期間、継続して受けられる
支給期間は通算1年6月の範囲内(健保法99条4項)
判定するのは保険者です。当てはまりそうなら、退職日を決める前に確認を。日付の並びひとつで結論が変わりうる箇所です。
退職イコールすべての終わり、ではない。ただし当てはまるかどうかは個別に判定されるので、ここに書いたのは保険者に聞きに行くときの見取り図です。
最後の1日に、落とし穴がある
条件を満たしていても、最終出社日の扱いひとつで結論がひっくり返ることがあります。協会けんぽが、はっきり書いています。
なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の傷病手当金はお支払いできません。
— 全国健康保険協会 よくあるご質問
条文に照らすと理屈は通っています。104条が求めているのは「資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている」こと。退職日に出勤していれば、その日は労務に服したことになり、支給を受けている状態ではなくなる。だから、そこで途切れる。
挨拶に行く、私物を取りに行く、書類を受け取りに行く。どれも自然な行動です。それが出勤として扱われるのかどうかは、会社の記録と保険者の判断によります。1年以上の被保険者期間があり、継続給付を当てにしているなら、退職日の予定を決める前にひとこと確認しておく価値があります。
退職すると、今度は雇用保険が出てくる
辞めたあとに関わってくるのが雇用保険です。ここで多くの人がつまずくのですが、傷病手当金と基本手当(いわゆる失業保険)は、前提が逆を向いています。
健康保険の傷病手当金
療養のため労務に服することができない状態
健康保険法99条1項
雇用保険の基本手当
職業に就くことができる状態で、求職の申込みをしていること
働ける状態であることが前提
まだ働ける状態ではないのに退職した場合、基本手当をそのまま受けるのは前提に合いません。そのために置かれているのが、受給期間の延長です。
基本手当は、(中略)当該期間(当該期間内に妊娠、出産、育児その他厚生労働省令で定める理由により引き続き三十日以上職業に就くことができない者が、厚生労働省令で定めるところにより公共職業安定所長にその旨を申し出た場合には、当該理由により職業に就くことができない日数を加算するものとし、その加算された期間が四年を超えるときは、四年とする。)内の失業している日について(中略)支給する。
— 雇用保険法 第20条第1項
30日以上働けない状態が続くなら、申し出ることで受給期間を先送りできる。自分の事情が対象に当たるかは、ハローワークで確かめてください。
ついでにひとつ、まぎらわしい名前の話を。離職後にハローワークで求職の申込みをしたあと、病気やケガで職業に就けなくなった場合の給付として、雇用保険法37条に傷病手当という制度があります。健康保険の傷病手当金とは別物です。一文字違いのこの混乱は、次の記事で3つまとめてほどきます。
判断は、あなたに返します
このサイトは、退職を勧めることも、復職を勧めることもしません。体調と生活と職場の事情がすべて絡む判断を、外から一般論で決めることはできないからです。
代わりに、決める前に確かめられることを並べておきます。
- 1
会社の休職期間は、いつまでか
就業規則の該当箇所。満了時の扱いも同じ条に書かれています。
- 2
傷病手当金は、あとどれだけ残っているか
支給を始めた日から通算1年6月。すでに支給された日数を引いた残りです。
- 3
被保険者期間は1年以上あるか
退職後も継続して受けられるかどうかの条件の1つです。
- 4
退職日をいつにするか
日付の並びで結論が変わりうるので、決める前に保険者へ聞く価値があります。
この4つが分かっていれば、どちらの道を選ぶにしても、見えない部分をずいぶん減らした状態で決められます。
退職を選んだ場合に動き出す期限——健康保険の任意継続の20日、雇用保険の受給期間、住民税の引かれ方——は、辞める前に確認できることに一枚でまとめました。どれも決める前に窓口で聞けることです。