「うつ病の休職は最長1年6か月」。そんな説明を見かけたことがあるかもしれません。

でも、この1年6か月は健康保険の傷病手当金が支給される期間のこと。会社を休める期間の話ではありません。ふたつは、別々のものさしで動いています。

休める期間を決めているのは、就業規則

労働基準法89条には、就業規則に書くべきことが列挙されています。始業終業の時刻、賃金、退職。休職は、そこに含まれていません。

休職が当てはまるのは、最後の号です。

十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項

— 労働基準法 第89条

「定めをする場合においては」と条件がついている。制度を置いた会社は書く義務を負うけれど、上限を何日にするかを法律は決めていない、ということです。だから会社ごとにばらばらで、半年のところも、三年のところもあります。

ちなみに就業規則そのものは、労働基準法106条によって、作業場への掲示や書面の交付などで労働者に知らせておくことが会社に義務づけられています。手元になければ、人事の窓口で見せてもらえます。

「1年6か月」が指しているもの
  • 会社を休める期間

    就業規則

    法律の定めは無い。勤続年数で変わることがある

  • 傷病手当金が支給される期間

    健康保険法99条4項(通算1年6月)

    会社の休職期間とは無関係に決まる

目的も決め方も違うふたつです。混同すると、会社の期間が切れたあとの見通しが立たなくなります。

このふたつがずれることは、めずらしくありません。会社の休職期間のほうが短いことも、長いこともある。だから残り日数は、別々に数えておく。それだけで先の見通しがだいぶ変わります。

診断書には、2つの顔がある

診断書とひとことで言っても、何のために出すかで役割が変わります。

  1. 1

    会社に出す診断書

    休職の必要性を会社に示すためのもの。要否も様式も提出先も、就業規則と会社の運用しだいです。法律で一律に決まっているわけではありません。

  2. 2

    傷病手当金の申請書

    健康保険への申請書類。支給の要件が「仕事に就くことができない」状態であることなので、医師が記入する欄があります。

傷病手当金のほうは、要件が条文に書いてあります。

被保険者(中略)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

— 健康保険法 第99条第1項

協会けんぽの挙げる支給の条件も4つ。業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること。仕事に就くことができないこと。連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと。休業した期間について給与の支払いがないこと。

つまり、支給を分けるのは「休職しているか」ではなく「労務に服することができない状態か」です。会社に休職制度が無くても、健康保険の給付は別の物差しで判断される——そういう関係になっています。

先に読んでおくのは、3つ目

就業規則の休職の条には、だいたい次の3つが並んでいます。全部を急いで読む必要はありません。ただ、3つ目だけは最初に見ておいてほしい。

  1. 1

    どういう状態のときに休職とするか

    欠勤が何日続いたら、といった要件が書かれています。

  2. 2

    休職できる期間

    勤続年数ごとの表になっていることがあります。

  3. 3

    期間が満了しても復職できないときの扱い

    読むのがいちばんつらい箇所です。でも、知らないまま期限を迎えるほうが、ずっと重い。

期間を延長できるか。休職と復職をくり返したとき期間は通算されるか。どちらも就業規則の書き方しだいで、一般論では答えられません。自分の会社の規則で確かめてください。

もうひとつ、期間の長さに関わるので触れておきます。年次有給休暇の8割要件です。労働基準法39条10項は、業務上の負傷・疾病による療養の休業、育児休業、介護休業、産前産後休業の期間を「出勤したものとみなす」と定めていますが、業務外の病気やケガによる休職は、この並びに入っていません。出勤率の具体的な計算やすでに持っている有給の扱いは就業規則と運用によるので断定はできませんが、休職の期間を相談するときに一緒に聞いておくとよい項目です。くわしくは休職と育休の違いに並べました。

体調の見通しや、復職できる状態かどうかの判断は、主治医と産業医の領域です。このサイトは踏み込みません。