最初に、正直に書いておきます。このサイトの運営者に、病気による休職の経験はありません。だから、ここに体験談は置きません。

その代わりに置くのは、この主題でいちばん取り違えが起きやすい場所を、条文で突き合わせた記録です。

「休んだときにもらえるお金」を調べていくと、よく似た名前が3つ出てきます。

  • 健康保険の傷病手当金
  • 雇用保険の傷病手当
  • 労災保険の休業補償給付

似ているのは名前だけで、根拠の法律も、窓口も、金額の決め方も違います。どれに当たるかを取り違えると、そもそも申請する場所から間違えることになります。

3つを並べる

3つの制度の、根拠と前提
  • 健康保険の傷病手当金

    健康保険法99条

    業務外の病気やケガの療養のため労務に服することができないとき

  • 雇用保険の傷病手当

    雇用保険法37条

    離職後、ハローワークで求職の申込みをした後に病気やケガで職業に就けないとき

  • 労災保険の休業補償給付

    労働者災害補償保険法14条

    業務上の負傷または疾病による療養のため労働することができず賃金を受けないとき

どれに当たるかは、業務上か業務外か・在職中か離職後か・働ける状態かどうかという事実で決まります。自分で選ぶものではありません。

健康保険の傷病手当金(健康保険法99条)

被保険者(中略)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。

額は、支給開始日の属する月以前、直近の続いた12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1の、3分の2(99条2項)。期間は、支給を始めた日から通算して1年6月(99条4項)。協会けんぽの挙げる条件は4つ——業務外の事由による病気やケガであること、仕事に就くことができないこと、連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと、休業した期間について給与の支払いがないこと。

雇用保険の傷病手当(雇用保険法37条)

傷病手当は、受給資格者が、離職後公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした後において、疾病又は負傷のために職業に就くことができない場合に(中略)支給する。

こちらは離職後の制度です。日額は基本手当の日額に相当する額(同条3項)。在職中か離職後か——健康保険の傷病手当金とは、まず時点から違います。

労災保険の休業補償給付(労働者災害補償保険法14条)

休業補償給付は、労働者が業務上の負傷又は疾病による療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする。

仕事が原因なら、こちら。健康保険の傷病手当金が「業務外」を要件にしているのと、ちょうど裏返しの関係です。

取り違えると、何が起きるか

間違えやすい組み合わせ
  • 仕事が原因のケガで、健康保険の傷病手当金を申請する

    健康保険は業務外が要件。労災の領域です

  • 在職中に、雇用保険の傷病手当を申請する

    離職後・求職の申込み後の制度です

  • 退職後も、健康保険の傷病手当金を受け続ける

    健康保険法104条の継続給付の条件を満たす場合に限られます

3つ目だけは、条件しだいで成り立ちます。健康保険法104条は、資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者だった人が、資格を喪失した際に傷病手当金を受けている場合について、継続して受けられると定めています。

この記事の立場

ここに書いたことは、すべて条文と保険者・省庁の案内で確かめたものです。確かめられなかったことは、書いていません。たとえば傷病手当金の支給期間が「通算して1年6月」になった時期は、公開当初は公的なページで確認できず伏せていましたが、その後、厚生労働省の案内で令和4年(2022年)1月1日の施行を確認できたので、書き足しました。確かめられた順に、足していきます。

どの制度に当たるか。条件を満たすか。判定するのは、それぞれの実施機関です。

確認先
  • 健康保険の傷病手当金

    加入している健康保険の保険者

    協会けんぽ、または勤務先の健康保険組合

  • 雇用保険の傷病手当・受給期間の延長

    ハローワーク(公共職業安定所)

  • 労災保険の休業補償給付

    労働基準監督署

全体の地図を持って窓口に行けば、何を聞けばいいかはもう決まっています。このサイトが役に立てるのは、そこまでです。