休職に入って最初にこたえるのは、この時間差です。収入は止まる。なのに、支払いは止まらない。

傷病手当金の額を調べて少し安心したあとに、社会保険料と住民税の請求がやってくる。このふたつは仕組みがまるで違うので、分けて見ていきます。

社会保険料は、免除されない

保険料の免除という制度は、あります。ただし日本年金機構が免除として挙げているのは、次の3つだけです。

  • 産前産後休業期間中の保険料免除
  • 育児休業期間中の保険料免除
  • 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置

病気やケガによる休職は、ここに入っていません。「休業イコール免除」ではないのです。免除されるのは、出産と育児にまつわる休業だけ(休職と育休の違いは横断ガイドに、産休と育休でお金の出どころが入れ替わることはもう一枚のガイドにまとめてあります)。

負担そのものの根拠は、健康保険法161条です。

被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。

— 健康保険法 第161条第1項

休職していても、被保険者であることは変わりません。だから、この負担も続きます。

給与が無いと、天引きができない

ふだん保険料をあまり意識しないのは、給与から引かれているからです。その根拠が167条にあります。

事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(中略)を報酬から控除することができる。

— 健康保険法 第167条第1項

「報酬を支払う場合においては」。休職して報酬が止まると、引く元が無くなります。負担は残るのに、天引きはできない。ここから先が、会社ごとの取り決めの世界です。

給与が止まったときの、保険料の払い方

よくある取り決めの形

  • 会社が立て替え、復職後に精算する

    復職後の給与から引かれる

    戻ってからの手取りが下がる

  • 毎月、本人が会社に振り込む

    休職中も毎月の支払いが発生

  • 傷病手当金が入ってから、まとめて払う

    会社が認めている場合に限る

どの方法になるかは会社の運用しだいです。金額と振込先、いつから始まるか。休職に入る前に聞いておくと、後がずっと楽になります。

どの形になるかは就業規則と個別の取り決めによるので、このサイトから「こうなる」とは言えません。聞く相手は勤務先です。

住民税は、去年の所得で決まっている

もうひとつが住民税。こちらは、仕組みそのものが時間差でできています。

所得割の課税標準は、前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする。

— 地方税法 第313条第1項

いま納めている住民税は、去年働いていたぶんへの税金です。休職して今年の収入が落ちても、今年払う額はすぐには下がらない。収入がいちばん少ない時期に、収入が多かった年の税額を払う——そういう構図になっています。

天引きが止まったぶんは、どこへ行くのか

給与所得者の住民税は、6月から翌年5月まで毎月給与から引かれるのが原則です(地方税法321条の5第1項)。では、給与が出なくなったら。

前項の特別徴収義務者は、(中略)個人の市町村民税の納税義務者が当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなつた場合には、その事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額は、これを徴収して納入する義務を負わない。

— 地方税法 第321条の5第2項

引けなくなったぶんは、消えるのではなく残ります。残りをどう納めるか——納付書で自分で払うのか、会社が立て替えるのか、まとめて徴収されるのか——は、会社の運用と市区町村の取り扱いで変わります。同じ条文のただし書には、時期によっては一括で徴収する定めも置かれています。

2つの支払いの、性格の違い
  • 社会保険料

    休職中も毎月発生する

    免除は産休・育休のみ。天引きの元が無くなるだけで負担は残る

  • 住民税

    前年の所得で決まった額を納める

    今年収入が下がっても、その年の税額には反映されない

休む前に、3つだけ聞いておく

体調がいちばん落ちている時期にお金の交渉をするのは、いちばんつらい作業です。だからこそ、休みはじめの早い段階でこの3つだけ確かめておくと、後がぐっと軽くなります。

  1. 1

    社会保険料の自己負担は毎月いくらか

    給与明細の控除欄。健康保険料と厚生年金保険料の金額を見ておきます。

  2. 2

    その保険料をどう払うのか

    立替か、振込か。振込ならいつまでに、どこへ。会社の担当窓口に聞きます。

  3. 3

    住民税の残りはいくらで、どう納めるのか

    納付書が自宅に届くのか、会社を通すのか。金額は市区町村からの通知で分かります。

住民税をどうしても納めるのが難しい事情があるときは、市区町村によっては徴収の猶予などの相談を受けているところがあります。扱いは自治体ごとに違うので、お住まいの窓口へ直接。「こうすれば減る」と一律に言える話ではないため、ここでは書きません。